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エコバッグのノベルティ|福祉事業所に頼める条件を調べました
2026年8月17日
目次
名入れのエコバッグを300個、来年の展示会用にノベルティで発注するとします。1枚300円だとして、そのうちいくらが、実際に縫った人の手元に残るのか。担当者としてそこまで考えたことがある人は、そう多くないはずです。
気になって、「エコバッグ ノベルティ」で検索した上位5件を順に開いてみました。価格が載っていたのは3件、最小ロットは4件です。ただ、縫った人にその代金がどう渡るかについては、5件とも一行もありませんでした。
では、福祉の側に聞けば分かるのだろうか。そう思って、次に頼めそうな窓口を探し始めました。
福祉の側の窓口は、検索では出てきませんでした
福祉事業所(多くはB型事業所にあたります)や共同受注窓口、フェアトレード団体に、ノベルティのバッグを頼めないかと、13件の窓口を当たりました。ロット・単価・納期という、発注前にまず知りたい3点がそろって公開されていたのは、13件のうち3件だけでした。
検索では、ほとんどたどり着けませんでした。「就労継続支援B型 エコバッグ ノベルティ 名入れ ロット」のように言葉を変えて4回検索しても、福祉側の窓口が上位に出てきたことは一度もありません。今回13件に届いたのは、東京都福祉局が公表している事業所リストと、厚生労働省が障害者就労施設等情報に載せている共同受注窓口一覧(平成31年1月31日現在)を起点にしたからです。事業所自身のホームページを見ても、条件までは載っていませんでした。
そして福祉の側も、代金がどこへ渡るかは書いていませんでした。そこは、上位に並んでいたカタログサイトと変わりません。
布のバッグを扱っていた7つの窓口
13件のうち、布製のバッグ類を扱っていたのは7件でした。エコバッグまたはトートバッグを名指ししていたのが6件、板橋区立小豆沢福祉園だけは「巾着袋・手提げかばん等の布製品」というくくりでの記載です。表は、ロット・単価・納期の3点をどれだけ公開しているかの順に並べました。
受けられる数量は、7件でばらばらです。上限を具体的な数で公開していたのは2件で、新宿トライ工房が最大100枚、小平市立たいよう福祉センターが最大7個。どちらも冒頭の300個には届きません。たいとう第二福祉作業所は上限の欄が「要相談」ですが、〜300個で採用された実績のほうが書かれています。残る4件は、上限も実績も数がありません。つまり300個を受けられると確定できる窓口は、この7件の中に1件もありませんでした。福祉事業所ならどこでもロットに応じてくれる、という前提は成り立ちません。
| 窓口 | 運営主体 | 公開されている条件 | 代金の行き先 |
|---|---|---|---|
| 新宿トライ工房 | 社会福祉法人新宿区障害者福祉協会 | A4トートバッグ、10〜100枚、片面印刷込み300円、納期1ヶ月 | 非公開 |
| 小平市立たいよう福祉センター | 社会福祉法人小平市社会福祉協議会 | エコバック、1〜7個、300円〜、納期2週間 | 非公開 |
| 板橋区立小豆沢福祉園 | 社会福祉法人東京援護協会 | 巾着袋・手提げかばん等の布製品、1個から、納期2週間程度、単価110円〜 | 非公開 |
| たいとう第二福祉作業所 | 特定非営利活動法人つなぐ台東 | トートバッグ1,500円、1個から(数量が多い場合は要相談) | 非公開 |
| キッチンさかえ | 一般社団法人栄福祉会 | 米袋を再利用したトートバッグ1,200〜1,500円、ロット・納期は要相談、初回データ作成料1,000〜5,000円 | 非公開 |
| シサム工房「2 smiles novelty」 | 株式会社シサム工房 | 原則50個から、単価・納期は記載なし | 非公開(途上国の生産者の自立支援につながる、との記載まで) |
| 障がい者アート協会 | 一般社団法人障がい者アート協会 | エコバッグを明記、ロット・単価・納期は記載なし | アート使用料の著作権使用料は100%が作家へ(商品代金の率ではない) |
1. 新宿トライ工房
3点そろって公開していた3件のうち、片面の印刷まで含んだ価格を書いていたのは、新宿区障害者福祉協会が運営する新宿トライ工房だけでした。ただし、この情報が載っているのは新宿区立障害者福祉センターの作業室のページではなく、東京都福祉局が公表している事業所リストのほうです。
同じリストには、受注実績の欄もあります。新宿トライ工房は、東京都・ほかの官公庁・民間企業のいずれについても「無」と回答しています。300円で10枚から発注できる状態にありながら、です。
- 公開されている条件:A4トートバッグ、10枚から100枚まで、片面印刷込みで1枚300円、納期1ヶ月(受注数により応相談)
- 問い合わせ先:障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト|東京都福祉局、または新宿区立障害者福祉センター 作業室
- 代金の行き先:非公開(300円のうちいくらが工賃になるかは、公式ページにも東京都のリストにも記載がありません)
2. 小平市立たいよう福祉センター
小平市社会福祉協議会が運営する小平市立たいよう福祉センターも、ロット・単価・納期の3点がそろっています。品目は「エコバック」と書かれていました。ただし受けられるのは最大7個までで、ノベルティの数量には届きません。
条件がそろっていることと、頼めることは別だという実例です。備考には「発注元による回収希望」ともあり、納品の手間まで含めて考える窓口だと分かります。受注実績は、東京都・ほかの官公庁・民間企業の3欄とも「無」でした。
- 公開されている条件:エコバック、1個から7個まで、300円〜、納期2週間
- 問い合わせ先:障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト|東京都福祉局、または小平市社会福祉協議会
- 代金の行き先:非公開
3. 板橋区立小豆沢福祉園
社会福祉法人東京援護協会が運営する板橋区立小豆沢福祉園は、巾着袋や手提げかばんなどの布製品を、1個から受け付けています。ここだけは、品目が「エコバッグ」でも「トートバッグ」でもなく、布製品というくくりで書かれていました。
同じリストの受注実績欄では、民間企業等が「有」と回答されています。新宿トライ工房と小平が3欄とも「無」だったのと並べると、福祉事業所は高くて遅くて企業とは取引がない、という思い込みが、今回の7件の中だけでも一様には成り立たないことが分かります。
- 公開されている条件:巾着袋・手提げかばん等の布製品、1個から(上限は要相談)、納期2週間程度、単価110円〜(品目グループ全体の記載で、品ごとの内訳ではありません)
- 問い合わせ先:障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト|東京都福祉局
- 代金の行き先:非公開
4. たいとう第二福祉作業所
たいとう第二福祉作業所は、13件の中で唯一、ノベルティとして採用された実績を数量つきで書いていた窓口です。東京都のリストには「ノベルティとして採用されたことがあります(〜300個)」とあります。プリントはシルクスクリーンを自所で行っていて、オリジナルイラストも30種前後そろっているとのことでした。
数量が多い場合は材料の発注とプリントに時間がかかるため要相談、と上限の欄にあります。何個までなら受けられるかは、聞いてみないと分かりません。
- 公開されている条件:トートバッグ1,500円、1個から(数量が多い場合は要相談)、プリントはシルクスクリーンで自所実施
- 問い合わせ先:障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト|東京都福祉局、またはつなぐ台東
- 代金の行き先:非公開
5. キッチンさかえ
キッチンさかえは、お米の袋を再利用してトートバッグを作っています。立川市の一般社団法人栄福祉会が運営していて、缶バッジやストラップといった雑貨も手がけています。
この窓口だけ、初回のデータ作成料を単価とは別に書いていました。販促会社の見積もりでいう版代にあたる費目です。
- 公開されている条件:米袋を再利用したトートバッグ1,200円〜1,500円、初回のみデータ作成料1,000円〜5,000円程度、最小ロット・納期は要相談
- 問い合わせ先:障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト|東京都福祉局、または栄福祉会
- 代金の行き先:非公開
6. シサム工房「2 smiles novelty」
ここまでの5件は東京都内の福祉事業所でしたが、シサム工房は少し性質が違います。1999年からフェアトレードの商品開発と輸入販売を行ってきた株式会社で、アジア6か国13のフェアトレード生産者団体と継続的に取引していると自社サイトに書いています。ノベルティ専用に「2 smiles novelty」という事業を立ち上げ、卸2課という専門窓口も新設していました。
特設ページの品目には、エコバッグが名指しで載っています。少ない数量なら学生や個人でも利用できる、とも書かれていました。
- 公開されている条件:原則50個から(学生や個人でも利用可)、単価・納期は記載なし
- 問い合わせ先:2 smiles novelty特設ページ|シサム工房(卸2課宛て)
- 代金の行き先:金額・率とも非公開(「お客様のご注文が途上国に暮らす生産者の自立支援につながります」との記載まで)
7. 一般社団法人障がい者アート協会
障がい者アート協会のノベルティ事業も、仕組みが異なります。障害のある作家が描いたアートを、デザイン会社のMOGUがノベルティ用にリ・デザインし、実際にエコバッグへ印刷・製造するのは別の事業者です。エコバッグそのものを障害のある人が縫っているわけではありません。
それでも、13件の中で唯一「率」を公開していた窓口ではありました。公式サイトによると、アート使用料に含まれる著作権使用料は100%が障がい者アーティストへ支払われるとのことです。ただし、これは商品代金に対する率ではなく、アート使用料という費目の内訳の率です。エコバッグ1個あたりの代金のうち、アート使用料がいくらかは公開されていませんでした。
- 公開されている条件:アイテム一覧にエコバッグを明記、最小ロット・単価・納期は記載なし
- 問い合わせ先:SDGsを意識した障がい者アートノベルティつくります|障がい者アート協会
- 代金の行き先:アート使用料に含まれる著作権使用料は100%が障がい者アーティストへ支払われる、と公式サイトに記載。ただし商品代金に対する率ではなく、アート使用料という費目の内訳の率です
品目の欄だけでは見つからない窓口
残る6件は、品目の欄からは布のバッグを作れるかどうかが読み取れませんでした。おおむすび連絡会は「バッグ等の雑貨」で、何の素材かが分かりません。渋谷作業所連絡会は「布製品」で、バッグを含むのかが分かりません。板橋区立小豆沢福祉園を表に入れたのは、「巾着袋・手提げかばん等の布製品」と、布とバッグの両方が書かれていたからです。ただし、品目の欄だけで切ってしまうと落ちる窓口がありました。
豊島区のフレンド(特定非営利活動法人ネットワーク豊友)は、逆の見つけにくさがありました。東京都のリストの品目欄はコーヒーと紙製の雑貨なのですが、受注実績の欄に「豊島区内民間企業」のロゴ入りオリジナルバッグとあります。品目欄だけで候補を絞ると、こういう窓口は落ちます。
残りの窓口は、ロット・単価・納期のどれも「応相談」か記載なしで、聞いてみるところから始まります。
横浜市障害者共同受注センターわーくるは、物品製造や裁縫を含む幅広い作業種を受け付けています。そして13件の中で唯一、代金が工賃になると正面から書いていた窓口でした。
横浜市内の障害者施設等にて行われている、部品の組立などの軽作業や、菓子類、工芸品などの製作は、施設を利用している障害者の工賃となります。
(出典:横浜市障害者共同受注センターわーくる)
「工賃になる」とは書いてあっても、金額も率も書かれていません。工賃になることと、いくらになるかの間には、まだ距離があります。
全国の就労支援事業所とネットワークを組む日本セルプセンターは、縫製を含む13部門を掲げています。ただし縫製部門の詳細ページには到達できず、エコバッグが作れるかどうかは確認できませんでした。事業所ごとに対応できる内容が違うため、窓口へ直接問い合わせる形になります。
渋谷作業所連絡会は、布製品を含む共同受注ネットワークの窓口です。専用のウェブサイトはなく、共同受注ネットワークリスト|東京都福祉局には「製造原価を含め製品完成にかかる費用を勘案してお見積りをします」と書かれています。価格の作り方への言及としては13件の中でもっとも踏み込んだ一文でしたが、工賃への配分額や率までは書かれていません。
大田区生産活動支援施設連絡会(おおむすび連絡会)は、バッグ等の雑貨を含む自主生産品の共同販売を扱っています。品目の詳細は「お気軽にお問い合わせください」とだけ案内されていました。
すぎなみ仕事ねっとは、Tシャツや手ぬぐいなど布製品への印刷を受けています。ただ、エコバッグまで作れるかどうかは書かれていません。ここも、問い合わせて確かめるところから始まります。
発注する前に、知っておきたいこと
民間企業に、調達の義務はあるか
調べていて、社内説明に使えそうな法律の話も見つかりました。障害者優先調達推進法(正式名称:国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律)です。「優先調達推進法があるので、企業にも福祉施設から購入する努力義務がある」という説明を、ときどき見かけます。しかし条文を確認すると、そう書かれてはいませんでした。義務や努力義務が課されているのは、国・独立行政法人等(第3条)、地方公共団体(第4条)、その方針の作成・公表(第6条・第9条)で、対象はいずれも国や自治体側です。条文に「民間」「事業者」という語は、一度も出てきません。
入札に効くのは、どの場面か
民間企業の側が関わってくるのは、第10条だけです。ここで義務を負うのも、発注する側の国や自治体のほうです。
国及び独立行政法人等は、(中略)公契約について、(中略)障害者就労施設等から相当程度の物品等を調達していることに配慮する等障害者の就業を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(出典:e-Gov法令検索「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」第10条)
国や自治体の入札に参加する企業にとっては、この条文が間接的に効いてくる場合があります。ただし「配慮する等〜努めるものとする」までで、加点が保証されているわけではありません。
「持続可能」を単独で印字するときの注意
もう一つ、印字する側にも注意点がありました。環境省の環境表示ガイドライン【令和8年3月版】は、「持続可能」「地球にやさしい」といった表現を、単独では使わない方がよい例として挙げています。ただし、これは違反の判定基準ではありません。ガイドライン自身が「我が国の企業が萎縮することなく」と書いているとおり、禁止ではなく、説明文を添えれば使える、という方向の指針です。エコバッグに環境配慮をうたいたいときは、なぜそう言えるのかの合理的な説明文を添えることが求められます。
代金の行き先について、分かったこと
13件を通して分かったのは、「商品代金のうちいくらが作り手に渡るか」を金額でも率でも公開していた窓口は、1件もなかったということです。「工賃になる」と明記していたのは横浜市わーくるの1件。障がい者アート協会が公開していた率は、アート使用料という別費目の内訳でした。残る11件は、金額も率も書いていません。シサム工房のように、代金が生産者の自立につながるという方向だけを書いた窓口はありました。
工賃という言葉自体には、工賃とはにまとめたとおり、事業所の生産活動から得た収益を、利用者に分配する仕組みという意味があります。300円のトートバッグを1枚売ったら、そのうち何円が工賃になるという単純な計算はできません。工賃は商品単価からではなく、事業所全体の生産活動収益から支払われるものだからです。
就労継続支援B型と、雇用契約を結ぶA型とでは、お金の呼び方も決まり方も違います。B型は工賃、A型は賃金と呼ばれ、A型には最低賃金が適用されます(詳しくはA型とB型の違い)。厚生労働省の令和6年度工賃(賃金)の実績についてによると、令和6年度のB型の平均工賃は月額24,141円でした。都道府県ごとの数字は工賃データベースにまとめています。
もう一つ、条件の置き場所にも偏りがありました。新宿トライ工房もたいとう第二福祉作業所も、条件は事業所自身のホームページではなく、東京都福祉局が公表しているリストに載っていました。障害者優先調達推進法の第11条には、こう書かれています。
障害者就労施設等は、単独で又は相互に連携して若しくは共同して、その供給する物品等の購入者等に対し、当該物品等に関する情報を提供するよう努めるとともに、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めるものとする。
(出典:e-Gov法令検索「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」第11条)
法律は情報提供に努めるよう定めています。ただ、実際に条件が載っているのは自治体のExcelファイルのほうで、発注しようとする担当者が検索でたどり着く場所ではありませんでした。
次にノベルティを検討するときは
エコバッグを300個発注したとき、1枚300円のうちいくらが縫った人の手元に残るのか。今回の13件では、この問いに金額で答えられる窓口はありませんでした。分かったのは、布のバッグを扱う窓口が7件あり、新宿トライ工房のように条件がそろいながら民間企業からの発注実績が「無」の窓口もあれば、板橋区立小豆沢福祉園のように「有」と答えている窓口もある、ということでした。
代金の行き先を聞くこと自体は、失礼な質問ではありません。むしろ、条件がそろっているのに情報が届いていない窓口にとっては、聞かれること自体が発注の入口になります。次にノベルティのエコバッグを検討するときは、価格とロットのページを開いたあとに、もう一段だけ、その先を尋ねてみてください。ほかの贈りものについても、同じように代金の行き先を確かめたものをサステナブルギフト12選にまとめています。
本記事の受注条件(ロット・単価・納期)は、東京都福祉局「障害者福祉施設が提供できる物品・役務の情報リスト」(令和6年度調査)、厚生労働省「共同受注窓口一覧」(平成31年1月31日現在)、および各窓口の公式サイトを2026年8月17日に確認したものです。価格・条件・受注可否は変動します。工賃の数字は厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」、法令はe-Gov法令検索、環境表示に関する記述は環境省「環境表示ガイドライン」(令和8年3月改定版)で確認しました。本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。