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工賃とは|買い物が作り手の工賃になる仕組み

2026年7月8日

目次

工賃とは、就労継続支援B型事業所を利用する人が、事業所での作業に対して受け取る対価のことをいいます。雇用契約を結ぶ一般的な「賃金」とは法律上の位置づけが異なり、最低賃金の適用対象にもなりません。厚生労働省の調査によると、B型事業所の平均工賃月額は全国平均で22,649円(令和5年度)、24,141円(令和6年度、対前年比106.6%)で推移しています。では、私たちが店で払った代金は、どこをどう通って、この24,141円になるのでしょうか。

工賃とは何か

「工賃」という言葉が使われるのは、主に就労継続支援B型事業所においてです。B型事業所は利用者と雇用契約を結ばない福祉サービスで、作業に対する対価は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれます。これに対し、雇用契約を結ぶ就労継続支援A型事業所では「賃金」が支払われ、最低賃金法の適用を受けます。B型は雇用契約を結ばないぶん、体調やペースに合わせて利用日数・作業時間を調整しやすい仕組みになっており、そのかわり工賃には最低賃金の規定が及びません。

工賃の原資は、事業所が受託する軽作業の対価や、事業所が企画・製造・販売する商品の売上です。つまり工賃は税金や補助金だけで賄われているのではなく、その事業所がどれだけの仕事を受注し、どれだけの商品を売れたかに直接連動します。事業所の運営費(人件費や施設維持費など)には障害福祉サービスの給付費が充てられますが、工賃そのものは生産活動の収益から支払う仕組みになっている点が、この記事の核心です。

なお、工賃は利用者の生活費のすべてではありません。多くの利用者は障害基礎年金など他の収入と組み合わせて生活しており、工賃はその一部を構成するものという位置づけになります。

全国平均はいくらか

厚生労働省が公表する「工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の平均工賃月額(全国平均)は次のように推移しています。

年度平均工賃月額(B型)
令和元年度16,371円
令和4年度17,031円
令和5年度22,649円
令和6年度24,141円(対前年比106.6%)

参考までに、雇用契約を結ぶA型事業所の平均賃金月額は令和6年度で91,451円(対前年比105.4%)であり、B型とは制度上も水準も別物です。

(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」)

なお令和5年度から令和6年度にかけての増加幅が大きく見えるのは、実態の急改善だけが理由ではありません。令和4年度までは「前年度の工賃支払対象者数」を分母にしていた算定方法が、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定にともない「前年度の一日当たりの平均利用者数」を分母とする方式に変更され、令和5年度実績からこの新しい算定方法が反映されている、と厚労省の資料に注記されています。数字を読むときは、この算定方法の変更点も含めて見る必要があります。

都道府県別に見ると差も大きいです。令和6年度で最も高いのは徳島県(30,231円)、次いで福井県(30,022円)、島根県(29,304円)が続く一方、大阪府(19,747円)や山形県(19,621円)のように2万円を下回る県もあります。事業所が受注する仕事の種類、立地、販路の作り方によって、同じ制度の中でも工賃水準は事業所ごと・地域ごとに大きく異なります。

(出典:厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」別紙3・別紙4 都道府県別平均工賃)

12年間の推移から分かること

同じ資料には平成24年度以降の推移も掲載されています。B型事業所の平均工賃月額は、平成24年度14,190円、平成28年度15,295円、令和元年度16,371円と、長らく年間数百円程度の緩やかな上昇にとどまっていました。令和2年度は15,776円と、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で前年から600円近く落ち込んでもいます。令和3年度16,507円、令和4年度17,031円と回復したのち、令和5年度以降の算定方法変更を経て22,649円、24,141円へと数字の見え方が大きく変わりました。13年分の推移と、47都道府県別の一覧は工賃データベースにまとめてあります。

つまり「工賃が急に2倍近くになった」と単純に読むのは正確ではなく、実質的な改善分と、算定方法の変更による見え方の変化を分けて理解する必要があります。一次資料の数値をそのまま引用するだけでなく、その数値がどう作られているかまで確認することが、この分野のデータを扱ううえでは欠かせません。

なぜ工賃はこの水準なのか

B型事業所を利用するのは、体調や障害特性により、企業や一般の雇用契約に基づく就労が難しい人たちです。作業時間や作業内容は利用者の体調に合わせて柔軟に調整されることが多く、そのぶん生産性や稼働時間は一般就労と単純比較できません。工賃が低い背景には、こうした働き方の性質そのものがあります。

同時に、工賃は「事業所が売上をどれだけ作れたか」にも左右されます。軽作業の受託だけに頼る事業所と、企画力のある商品を作って直接販売する事業所とでは、同じ制度の中でも工賃に差が出ます。つまり工賃の水準は、福祉制度の問題であると同時に、事業所の商品やサービスがどれだけ市場で評価されるかという、ごく普通の商売の問題でもあります。

工賃はどうやって上がるのか

工賃を底上げする道筋は、大きく分けて二つあります。一つは事業所側の努力で、商品の企画やデザインを見直し、受注先や販路を広げること。全国には、洗練されたデザインの雑貨や食品を作り、一般消費者向けの店舗やECで販売する事業所が増えています。行政側も、都道府県ごとに工賃向上に関する計画づくりや事業所支援の枠組みを設けており、事業所単独の努力だけに委ねられているわけではありません。

もう一つの道筋は、そうした商品を選ぶ側、つまり買い手の存在です。工賃は補助金の増額だけでは上がりません。事業所が作ったものが「福祉の商品だから」ではなく「欲しいから」買われて初めて、売上が積み上がり、工賃に還元されます。この順番を保つことが、めぐりものが商品の質やデザインを前面に置く理由でもあります。

あなたの買い物が作り手の工賃になる仕組み

商品を1点購入したとき、その代金は次のような経路をたどります。まず売上は事業所の生産活動会計に入り、そこから材料費や運営に関わる実費が差し引かれます。残った収益が、その事業所の工賃規程に基づいて利用者に分配されます。つまり、購入代金の一部が、めぐりまわって作り手の工賃になります。この流れは事業所によって会計処理の粒度が異なり、商品1点あたりの工賃を厳密に切り出せる事業所と、月間の総生産額から按分する事業所があります。

めぐりもので「1つ買うと、作り手に◯円」という還元バッジを表示しているのは、この流れのうち、実際に確認できた金額だけを可視化するためです。金額の根拠が事業所側に確認できない商品には、バッジを表示しません。数字を大きく見せるための演出ではなく、仕組みを正しく伝えるための表示だと考えています。

工賃の全国平均は、今も一般的な賃金水準と比べれば低いです。だがその数字の内側には、事業所ごとの商品づくりの努力と、それを選ぶ買い手の存在が積み重なっています。工賃を「かわいそうな人への支援」としてではなく、「その商品を選んだ結果として動く対価」として見ることが、この仕組みを長く機能させる前提になります。

B型事業所という仕組み自体について詳しくは、B型事業所とは|仕事・工賃・商品をやさしく解説 で解説しています。