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授産品とは|言葉の意味と、代金の行き先を調べました

2026年9月4日

目次

「授産品」という文字を、庁舎のロビーや道の駅の一角で見かけたことがあるかもしれません。調べてみると、たいてい同じ説明に行き着きます。障害のある人が福祉施設で作った製品のこと、そして「2006年に授産施設が就労継続支援事業所へ呼び替えられ、なくなった」という沿革です。

けれど、授産施設という言葉は、いまも法律の条文に残っています。令和6年10月1日時点で、生活保護法の授産施設が13か所、社会福祉法の授産施設が57か所、厚生労働省の統計に載っています。なくなったのは、障害のある人のための授産施設だけでした。

授産品とは、授産施設や福祉事業所で作られた物を指す言葉です。ただしこの語には、法令のどこにも定義がありません。今回、法令・省令の条文と、実際に商品を売っている窓口8件のページを一つずつ確認しながら、この言葉がいまどういう状態にあるのかを調べました。

授産品は法令用語ではなく、授産施設はいまも法律にある

「授産品」を検索しても、法令の定義には行き当たりません。見つかるのは、自治体や福祉団体がそれぞれの言葉で説明したページです。障がいのある人が通う作業所で、訓練の一環として作られた製品。多くの自治体がこの趣旨で書いています。

ところが、その根っこにある授産施設のほうは、条文にはっきり定義があります。生活保護法第38条は、保護施設の種類を五つ挙げ、四つめに授産施設を置いています。

(種類)第三十八条 保護施設の種類は、左の通りとする。 一 救護施設 二 更生施設 三 医療保護施設 四 授産施設 五 宿所提供施設

(出典:生活保護法(e-Gov法令検索))

続く第5項には、授産施設が何を目的にする施設かが書かれています。

5 授産施設は、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする施設とする。

(出典:同上)

対象は「障害のある人」ではなく「要保護者」、つまり生活保護を必要とする状態の人です。身体・精神の理由だけでなく、世帯の事情によって仕事に就きにくい人も含みます。ここが、市中の説明記事とはずれる最初のポイントです。

  • 授産品/授産製品:法令用語ではない。自治体・団体が使う慣用語
  • 授産施設:法令用語。生活保護法に規定があり、対象は要保護者

社会福祉法にも、第一種社会福祉事業として規定がある

社会福祉法にも、授産施設は規定されています。第2条第2項は第一種社会福祉事業を列挙し、その七号にこう書いています。

2 次に掲げる事業を第一種社会福祉事業とする。(中略)七 授産施設を経営する事業及び生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業

(出典:社会福祉法(e-Gov法令検索))

第一種社会福祉事業は、入所施設のように利用者への影響が大きい事業を集めた区分で、経営できるのは国・地方公共団体・社会福祉法人に原則限られます。授産施設がこの区分に置かれた理由を、厚生労働省の審議会資料はこう記録しています。

授産事業は、有力な失業者救済の調整弁の役割を果たしたが、一方で経済的搾取の手段にもなりかねなかったことから、第1種社会福祉事業として公による規制と監督のもとにおかれた。

(出典:生保・社会事業授産施設のあり方に関する提案|厚生労働省)

社会福祉法の側から見ても、授産施設は生計困難者のための施設で、生活保護法と同じく「法令用語」の側に立っています。授産施設の後継にあたる新体系のサービス(就労継続支援A型・B型)についても、法令上の位置づけはA型とB型の違いで確認できます。

つまり、いま棚に並ぶ「授産品」という札は、法令が名づけたものではありません。法令が名づけているのは、その札の向こうにある授産施設という施設のほうです。

「2006年になくなった」は、半分だけ正しい

授産品を検索すると、上位のページの多くが「2006年に授産施設が就労継続支援事業所へ呼び替えられた」で説明を終えています。この説明は、障害のある人のための授産施設については正しいです。ですが、授産施設という制度そのものが消えたわけではありません。

区分2006年2024年
生活保護法の授産施設21か所13か所
社会福祉法の授産施設113か所57か所

(出典:令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省ほか各年の概況)

生活保護法の授産施設と社会福祉法の授産施設の施設数の推移。2006年の21か所と113か所から、2024年の13か所と57か所へ

18年のあいだに社会福祉法の授産施設はほぼ半分まで減りましたが、区分として消えたわけではありません。厚生労働省の調査はいまも「授産施設」という名前で数を数え続けています。公式の定義は、こう書かれています。

(生活保護法の授産施設)生活法護法に基づき、身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている要保護者に対して、就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長する施設

(社会福祉法の授産施設)社会福祉法に基づき、労働力の比較的低い生活困難者に対し、施設を利用させることによって、就労の機会を与え、又は技能を修得させ、これらの者の保護と自立更生を図る施設

(出典:令和6(2024)年社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省。原文の「生活法護法」は誤字のままとした)

消えたのは、障害のある人のための授産施設という一つの区分だけでした。その区分がどう消えていったかは、統計の数字がそのまま記録しています。

障害者の授産施設が消えていった経路

障害者自立支援法(平成17年法律第123号)は、平成18年4月1日から施行されました。ただし全部の規定が同時に切り替わったわけではありません。附則は一部の規定について、施行日を政令にゆだねています。

三 附則第六十三条、第六十六条、第九十七条及び第百十一条の規定 平成二十四年三月三十一日までの日で政令で定める日

(出典:衆議院 制定法律情報「障害者自立支援法」)

その「政令で定める日」が実際に何月何日だったかは、今回の調査では確認できませんでした。確認できたのは、法律が定めた経過措置の限度が平成24年3月31日だったこと、そして厚生労働省の移行支援事業が延長されたことです。

平成23年度末まで事業を延長して実施することとしました。

(出典:事業者の運営安定化・新法移行支援等|厚生労働省)

9つの区分を合わせた障害者の授産施設の施設数が、2006年の3,697か所から2011年の811か所へ減り、2012年の調査では区分そのものが表から消えたことを示す棒グラフ

厚生労働省の社会福祉施設等調査で、身体・知的・精神の障害種別ごとにあった9つの区分を合計すると、2006年の3,697か所が2011年には811か所まで減っています。約22%まで減った計算です。そして2012年の調査では、この9区分そのものが表から消えました。

  • 3,697か所(2006年)→811か所(2011年)→区分消滅(2012年)
  • かわって登場:就労移行支援・就労継続支援A型・B型など6つの日中活動
  • 現在の後継にあたるのがB型事業所

(出典:平成23年社会福祉施設等調査の概況|厚生労働省、障害者自立支援法による改革|厚生労働省)

障害のある人の授産施設は、こうして名前ごと入れ替わりました。では、授産施設で作られたものを買ったとき、そのお金はどこへ向かうのでしょうか。

代金の行き先を、条文が決めている

めぐりものが毎回確かめているのは、代金がどこへ、いくら向かうのかです。授産施設については、この問いに条文が直接答えています。

(工賃の支払)第二十六条 授産施設の利用者には、事業収入の額から、事業に必要な経費の額を控除した額に相当する額の工賃を支払わなければならない。

(出典:授産施設の設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索))

「支払うことができる」でも「努めなければならない」でもなく、「支払わなければならない」です。事業に必要な経費を除いた残りを、事業所が留保してよいとは書かれていません。

就労継続支援B型事業所にも、同じ形の規定があります。

(工賃の支払等)第二百一条 指定就労継続支援B型の事業を行う者(中略)は、利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。

2 前項の規定により利用者それぞれに対し支払われる一月当たりの工賃の平均額(中略)は、三千円を下回ってはならない。

(出典:指定障害福祉サービス基準(e-Gov法令検索)。条文の全文と算定の背景はA型とB型の違いにまとめています)

「収入から経費を引いた残りを工賃として払う」という型そのものは、授産施設もB型事業所も同じです。違うのは下限の有無だけでした。

区分支払いの型下限
授産施設収入から経費を引いた残りを支払う義務規定なし
就労継続支援B型収入から経費を引いた残りを支払う義務月平均3,000円

工賃の全国平均や、この下限が置かれた経緯は工賃とはにまとめています。

消費税は、非課税から除かれている

もう一つ、条文が答えている問いがあります。社会福祉事業は原則として消費税がかかりませんが、授産施設の生産活動による販売は、この非課税から除かれています。

社会福祉法第二条第二項第四号若しくは第七号に規定する障害者支援施設若しくは授産施設を経営する事業(中略)において生産活動としての作業に基づき行われるもの(中略)を除く。

(出典:消費税法別表第二第七号ロ(e-Gov法令検索))

つまり、授産品には消費税がかかります。「福祉の商品だから税金がかからない」というのは誤解です。条文は、授産施設という名前をそのまま名指ししています。

買える窓口を8件調べて、分かったこと

条文が全額の支払いを義務づけているのは、事業所側の会計の話です。では、実際に売っている窓口は、そのお金の行き先を読者に説明しているでしょうか。自治体や団体が運営する販売窓口を8件開いて、確かめました。

窓口運営主体代金の行き先の記載
ひめじはーとふるSHOP姫路市公開(明記)
WAM NET授産品・芸術品ギャラリー独立行政法人福祉医療機構記載なし(紹介のみ)
KURUMIRU東京都福祉局記載なし
木津川市 本庁舎販売木津川市記載なし
大垣市 授産製品の紹介大垣市記載なし
笛吹市 障がい者支援授産品カタログ笛吹市地域自立支援協議会事業所連絡会目的の記載のみ
じゅさんあっと堺/PASSER堺市記載なし
事業団の授産品全国社会福祉事業団協議会記載なし(紹介のみ)

代金の行き先を1文で書いていたのは、8件のうち姫路市の「ひめじはーとふるSHOP」だけでした。

「ひめじはーとふるSHOP」の販売益は障害福祉事業所への売上に計上され、利用者本人に工賃として還元されます。

(出典:ひめじはーとふるSHOP|姫路市)

残り7件は、商品や事業所の紹介にとどまり、代金がどこへ向かうかは書かれていませんでした。WAM NETのように、そもそも決済がサイトを通らず、紹介だけを担う窓口もあります。手数料の有無や率まで公開しているページには、今回は一つも到達できませんでした。

法令が義務づけている部分と、窓口が自分から書くかどうかの部分は、別の話です。もう一つ、いまも動いている部分があります。呼び方そのものです。

呼び方は、いまも動いている

「授産施設」という名前の見直しを、記録として最初に確認できるのは行政の側の文書でした。平成4年、当時の厚生省は「授産事業のあり方検討委員会」を設置し、授産施設の将来像を検討しています。委員会がまとめた提言には、こう指摘されていました。

授産という名称について、国民の中になじみにくいとの指摘もあるので、この名称の検討を行うことが必要である。

(出典:時代を読む60 社会就労センター SELPとは|全国社会就労センター協議会)

名称を変更した当事者である全国社会就労センター協議会自身は、「授産」という語をこう振り返っています。

そもそも「授産」という名称は、明治初期以来使われてきた恩恵的、慈善的なものであり、社会福祉の根底にある人権やノーマライゼーションの思想から見ると、前時代的な感は否めなかった。

(出典:同上)

新しい名称として選ばれたのが「社会就労センター」、略称「SELP」でした。私たちについて|日本セルプセンターは、この名称が決まった年を1995年としています。

作業台で手を動かす作り手と、その傍らに立てかけられた何枚もの木の看板

現在使われている語を並べると、こうなります。

  • 社会就労センター/SELP:1995年ごろに業界団体が決めたとされる名称
  • ここいろひん:兵庫県が使う愛称(「こころ」と「いろ」の合成)
  • 自主製品:東京都が使う言い換え
  • 福産品:兵庫県議会が国に使用を提案した語

兵庫県議会が「福産品」を提案した

この言い換えの動きは、現在も止まっていません。令和7年3月26日、兵庫県議会は「授産品」という語を使わないよう国に求める意見書を可決しています。

これら商品を地方公共団体等においてはいまだ「授産品」と呼んでいる事例も見受けられるが、「授産品」という言葉に偏見や差別を感じる人もいる。よって、国におかれては、各種行政機関等において「授産品」ではなく、例えば、本県姫路市の障害者福祉施設や事業所において、障害者が生産する創造的な商品で、売り手も買い手も幸福にするという意味で使用しようという機運が高まっている「福産品」というような用語を使用するよう周知することを強く要望する。

(出典:意見書 第58号|兵庫県議会)

今回の調査で確認できた範囲を、整理しておきます。

  • 確認できた:兵庫県議会が令和7年3月26日に意見書を可決したこと
  • 確認できなかった:同種の意見書を可決した他の議会があるかどうか
  • 確認できた:厚生労働省の統計は、いまも「授産施設」という名前で施設数を数えていること

国が使い続けている語と、県議会が退けようとしている語が、同じ社会のなかで並んでいます。

呼び方より、仕組みを見る

「授産品」という呼び方をめぐっては、姫路市発の「福産品」、兵庫県の「ここいろひん」、東京都の「自主製品」、業界団体の「社会就労センター/SELP」と、いくつもの言葉が並んでいます。どれが正しいと決めつけることはしません。読者が自分で選べるように、分かった事実を並べておきます。

変わらないのは、呼び方がどれであっても、代金の行き先を決めているのは条文だという点です。授産施設なら省令第26条、B型事業所なら指定基準第201条が、収入から経費を引いた残りを工賃として支払うよう義務づけています。買うときに確かめる価値があるのは、パッケージに書かれた呼び名よりも、その先にどういう仕組みが動いているかのほうです。

全国の工賃の実額は、工賃データベースに都道府県別でまとめています。次に「授産品」という文字を見かけたら、その先にどんな仕組みが動いているか、一度確かめてみてください。


本記事の情報は、2026年9月4日時点でe-Gov法令検索の法令原文および厚生労働省・兵庫県議会等の公式ページ・公式PDFで確認したものです。障害者自立支援法の経過措置の終期を定めた「政令で定める日」の具体的な日付、各窓口の手数料率など、公表資料で確認できなかった事項は本記事に記載していません。制度や統計は更新される場合があるため、最新の情報は各出典でご確認ください。本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。