知る / LEARN
応援消費とは|意味と、代金が向かう先を型ごとに調べた
2026年9月3日
目次
応援消費とは、消費を通じて社会的課題を解決しようとする消費行動のことです。日本では2011年の東日本大震災をきっかけに、この言い方が広まりました。
ここでいう応援消費は,消費を通じて社会的課題を解決しようとすることを意味し,日本では2011年の東日本大震災を機にして広く使われるようになった(渡辺,2014;Stanislawski, Ohira, & Sonobe, 2015)。
(出典:水越康介・大平修司・スタニスロスキースミレ・日高優一郎「日本におけるバイコットおよびボイコットに関する一考察」『JSMDレビュー』第5巻第1号、2021年)
「応援消費」と検索すると、たいてい同じ説明に行き着きます。「応援したい気持ちで買う消費行動」。けれど、その行き先まで書いた記事には、まだ出会っていません。今回、公的な文書と実測できる数字を頼りに、型ごとに調べてみました。
定義は、まだ役所の言葉になっていない
応援消費という言葉を国の文書で探すと、法令上の定義には行き当たりません。見つかるのは、消費者庁が2016年にまとめた「倫理的消費」調査研究会の中間取りまとめです。
その他、応援消費、社会的消費、持続可能な消費、社会貢献型消費、といった言い換えの提案もみられた。しかしながら、倫理的消費を一つの言葉で言い換えることについては、賛否両論様々であり、研究会においては意見の一致をみていない。
(出典:「倫理的消費」調査研究会 中間取りまとめ(資料5-2)|消費者庁)
応援消費は、倫理的消費そのものの言い換えとして提案されながら、採用されませんでした。同じ資料は、倫理的消費の具体例も列挙しています。
研究会においても、倫理的消費の具体例として、地産地消、被災地産品の応援消費、障害者支援につながる消費、フェアトレード商品、寄付付商品、エコ商品、リサイクル製品、資源保護等に関する認証付商品(森林保全、海洋資源の保全)の消費、地域の伝統品の消費、動物福祉につながる消費など、様々な例が出された。
(出典:同上)
「被災地産品の応援消費」には、脚注に説明が添えられています。
「野菜サラダで応援しよう(東北・関東の野菜を食べよう)」等、被災地のための復興アクション。
(出典:同上)
つまり公的な整理では、応援消費は倫理的消費の言い換えとしては退けられ、具体例の一つという位置に置かれています。
- 倫理的消費の言い換えとしては提案されたが、採用されなかった
- 「被災地産品の応援消費」が、倫理的消費の具体例の一つとして列挙された
同じ列挙で「被災地産品の応援消費」と「障害者支援につながる消費」は別の項目として並んでいます。
2011年に生まれ、3つの形に分けられる
渡辺龍也(2014)は、応援消費が生まれた経緯をこう記録しています。
こうした一連の動きの中で「応援消費」という言葉が生まれ、急速に広まっていったのである。
(出典:渡辺龍也「「応援消費」—東日本大震災で「発見」された消費の力—」『現代法学』第26号、2014年)
渡辺自身は、誰が最初にこの言葉を使ったかまでは特定していません。学術としてこの現象を、最初期にまとめて分析した論文のひとつが、この渡辺(2014)です。渡辺は、応援消費を大きく3つの形に分けています。
- 被災地貢献(寄付つき/チャリティ)商品・サービスの購入
- 被災地産品・サービスの購入
- 被災地への旅行
ひとつめの被災地貢献商品は、CRM(コーズ・リレーテッド・マーケティング)と呼ばれる手法にもとづくもので、渡辺はこれを「寄付つき/チャリティ商品」の原型として位置づけています。寄付付き商品にどんな型があり、税の扱いがどうなるかは寄付付き商品とはにまとめました。
行政もこの動きを後押ししました。農林水産省は「東日本大震災の被災地産食品を積極的に消費することによって、産地の活力再生を通じた被災地の復興を応援するため」に、「食べて応援しよう!」|農林水産省というキャッチフレーズを掲げています。渡辺の論文にも、同じ取り組みが記録されています。
1万円は、実際にどこまで届くか
応援消費という言葉が広まった一方で、払ったお金がどこへ向かうのかを型ごとに比べた記事は、検索しても見当たりませんでした。
型ごとの公開状況
今回、代金の行き先が公開されている型と、非公開だった型を、同じ表に並べてみました。1万円を投じると、ふるさと納税は募集費用が5,000円以下におさえられ、残りが自治体の事業へ向かいます。Makuakeは8,000円が実行者へ、CAMPFIREは8,300円がオーナーへ入ります(どちらも消費税を除いた計算です)。
| 型 | 実例 | 公開の有無 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 自治体への寄附+返礼品 | ふるさと納税 | 公開(法令・告示で上限) | 返礼品は3割以下、募集費用は5割以下 |
| 購入型クラウドファンディング | Makuake | 公開 | 手数料は下表 |
| 購入型クラウドファンディング | CAMPFIRE | 公開 | 手数料は下表 |
| 飲食店の先払いチケット | さきめし | 非公開・2024年に終了 | 現行ページに手数料の記載なし |
| 被災地産品の直販 | 八重洲いしかわテラス(石川県) | 部分公開 | 売上高・来場者数は公表、配分は非公開 |
| 福祉事業所の商品 | 就労継続支援B型事業所 | 公開(国の定義と全国平均) | 生産活動収入から実費を引いた額を工賃として本人へ、全国平均は月24,141円 |
| 推し活のグッズ購入 | ― | 非公開 | 権利者・事務所・製造・小売の取り分を示す一次資料に到達できず |
公開の水準は、型によって大きく違います。
- 法律で上限が決まっている型
- 企業が自分で率を公開している型
- 国の統計で全国平均が分かる型
- 調べても分からなかった型
ふるさと納税は、代金の配分に上限が決められている唯一の型
ふるさと納税は、この十数年で規模が大きく変わりました。総務省の現況調査によると、令和7年度の受入額は前の年度からも増え続けています(ふるさと納税に関する現況調査結果|総務省)。
この規模の大きさが、行き先を法律で縛る理由にもなっています。ふるさと納税は、応援消費のなかで唯一、代金の配分に法令上の上限が決められている型です。総務省の指定制度は、返礼品を送る自治体に条件を課しています。
(1) 寄附金の募集を適正に実施する地方団体 (2) ((1)の地方団体で)返礼品を送付する場合には、以下のいずれも満たす地方団体 ・返礼品の返礼割合を3割以下とすること ・返礼品を地場産品とすること
募集にかかる費用にも上限があります。告示の条文はこう定めています。
第一号寄附金の募集に要する費用(法附則第七条第二項に規定する申告特例の求めに関する事務、第一号寄附金の受領を証する書類に関する事務など、当該募集に付随して生ずる事務に要する費用を含む。次号において「募集費用」という。)の額の合計額が、当該指定対象期間において受領する第一号寄附金の額の合計額の百分の五十に相当する金額以下であること。
(出典:改正告示新旧対照表(令和7年総務省告示第220号)|総務省)
2026年10月から、支払先の公表が義務になる
2026年10月からは、行き先の透明化がさらに進みます。募集費用として100万円以上を一つの支払先に払った場合、その支払先の名前や住所、支払った額と目的を一覧にして公表することが義務づけられます。
指定対象期間の初日の属する年度の前年度において募集費用として一の者に支払った額(一の者に複数の支払を行ったときは、その合計額)が百万円以上であるときは、当該指定対象期間の初日の前日までに、総務大臣の定めるところにより、その支払先の氏名又は名称、住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地、支払額及び支払目的を記載した一覧表を作成し、公表すること。
(出典:同上/施行の時期はふるさと納税の指定基準の見直し等|総務省で確認できます)
返礼割合3割そのものの根拠となる条文には、今回は届きませんでしたが、2019年に総務省が出した説明ページには、この3割という基準がはっきり書かれています。応援消費のなかで、代金の配分がここまで開示される型は、ほかにありません。
クラウドファンディングは、手数料の負担者が逆転することがある
購入型クラウドファンディングは、自分たちで手数料の率を公開しています。
| サービス | 手数料 | 負担者 |
|---|---|---|
| Makuake | 20%(税抜・決済手数料込み) | 実行者 |
| CAMPFIRE | 利用手数料12%+決済手数料5%(いずれも別途消費税) | プロジェクトオーナー |
| CAMPFIRE for Social Good | 手数料7%+決済手数料5%(いずれも別途消費税) | 支援者(「ご協力費」として負担) |
(出典:料金・手数料|Makuake/CAMPFIRE掲載時の手数料|CAMPFIRE)
社会貢献を目的とした区分「CAMPFIRE for Social Good」だけは、負担する側が逆転しています。オーナーの負担はなく、手数料と決済手数料を、支援者側が「ご協力費」として全額負担する仕組みです。
同じ「応援して買う」でも、手数料を誰が負担するかがサービスによって逆転します。代金の行き先を型ごとに比べてはじめて見えてくる違いです。
さきめしのように現行ページに手数料の記載がないもの、八重洲いしかわテラスのように売上高までは公表されていても配分までは分からないもの、推し活のグッズのように権利者・事務所・製造・小売の取り分を示す一次資料そのものに到達できなかったものもあります。分かったところまでを、分かったとおりに書きました。
似た言葉との境界
「応援消費」と一緒に語られる言葉はいくつもあります。一次資料に紐づけて並べると、重なりと違いが見えてきます。
| 概念 | 同じところ | 違うところ |
|---|---|---|
| 寄付付き商品 | 買うことで自分以外の誰かに金銭が向かう | 応援消費の方が広い。渡辺(2014)は寄付つき商品の購入を応援消費の3形態のうちの1つと位置づけている |
| エシカル消費 | 社会的な配慮を伴う購買という点 | 消費者庁の整理では、応援消費は倫理的消費の言い換えではなく具体例の一つとして列挙されている |
| フェアトレード | 生産者への配慮を伴う購買という点 | 消費者庁の同じ列挙で、フェアトレード商品は被災地産品の応援消費とは別の項目として並んでいる |
| ふるさと納税 | 応援したい相手に自分の意思でお金を向ける | 法律上は寄附金であって商品の購入ではなく、返礼割合や募集費用に法令上の上限がある |
| 購入型クラウドファンディング | 支援の意思で先に払い、あとからモノが届く | 渡辺(2014)の3形態にクラウドファンディングは含まれていないが、市中の記事の多くはこれを応援消費の代表例として扱っている |
推し活は、応援消費に入るのか
今回のSERP調査で見た応援消費の記事のうち、7件中5件が推し活を応援消費の一種として説明していました。財務省の広報誌にも、近い言葉があります。
「推し」と呼ばれる存在を応援するためにお金や時間を投じる行為
(出典:コラム 経済トレンド137|財務省)
行政と市中で、語の範囲が違う
ただし、このコラムは「応援消費」という言葉を一度も使っていません。財務省のコラムが矢野経済研究所やインテージの調査を引用する形で、次の数字が書かれています。
- 推し活の主要16分野の市場規模は、2020年度から2024年度にかけて約50%拡大した
- 15〜79歳の3人に1人が推しを持つとされる
それでも、応援消費という語そのものは出てきません。行政の文書は推し活を応援消費と呼ばず、市中のメディアの多くは応援消費に含めています。どちらが正しいという話ではなく、言葉の範囲が書き手によって違う、という事実です。
応援消費は、ほかの支援より続く

渡辺(2014)は、寄付・支援物資の提供・ボランティア活動・応援消費という4つの支援行動が、時間の経過でどう変わるかを比べています。
以上を総合すると、寄付/募金、物資の提供、ボランティア活動は、時間の経過とともに大きく減少する一方で、応援消費は落ち込みがずっと少ない、ないしは増加傾向を示していて、継続性の高い支援形態であることが明瞭である。
(出典:渡辺龍也「「応援消費」—東日本大震災で「発見」された消費の力—」『現代法学』第26号、2014年)
ライフネット生命の調査(2012年2月)は、震災直後と1年後を比べた継続率を出しています。
| 支援行動 | 震災直後 | 震災1年後 | 継続率 |
|---|---|---|---|
| 被災地域のための寄付 | 54.0% | 21.0% | 38.9% |
| 被災地域へ支援物資を提供 | 11.6% | 3.8% | 32.8% |
| 被災地域での復旧・復興支援活動 | 5.1% | 3.2% | 62.7% |
| 被災地を支援する商品を買った | 35.9% | 24.1% | 67.1% |
4つの行動の中では寄付と支援物資の提供は減少幅が大きく、3分の1ほどへと落ち込んでいる。それに対して応援消費とボランティア活動の減少幅は小さく、特に応援消費は継続率が67.1%と最も高かった。
(出典:渡辺(2014)「応援消費」)
助けあいジャパンの調査でも、同じ形が出ている
助けあいジャパンの調査(2013年2月)では、時間の経過にともなう変化がさらにはっきり出ています。
| 支援行動 | 震災直後〜半年後 | 1年〜2年後 |
|---|---|---|
| 寄付や募金 | 60.8% | 11.8% |
| 救援物資の提供 | 10.3% | 1.1% |
| 被災地でのボランティア活動 | 2.6% | 0.8% |
| 被災地産品の購入 | 14.3% | 17.8% |
| 被災地への旅行 | 2.1% | 4.3% |
寄付/募金、物資の提供、ボランティア活動は時間の経過とともに大幅に減少しているのに対して、被災地産品の購入と被災地への旅行はそれぞれ1.2倍、2倍へと増えている。今後取りたい行動でも被災地産品の購入が寄付/募金を上回り、最多となっている。
(出典:渡辺(2014)「応援消費」)
寄付や物資の提供、ボランティア活動が大きく減るなか、被災地産品の購入と被災地への旅行だけが、時間が経つほど増えていました。
新しく始める人は、ほとんど増えなかった
続く人が多い一方で、新しく始める人は震災直後に集中していました。日経流通新聞の調査(震災2年後実施)では、経験者は全体の54.6%で、内訳はこうです。
- 震災直後に始めた人:49.5%
- 震災後しばらくしてから始めた人:5.1%
それは、応援消費をする人はその大部分が直後からやっていて、時間の経過とともに右肩上がりで増えていったわけではないことを物語っている。
(出典:渡辺(2014)「応援消費」)
第一生命経済研究所の調査(震災1年半後・1都3県在住の女性)では、経験者63.1%のうち続けているのは30.9%でした。渡辺(2014)の総括はこうです。
応援消費をしたことがある人のうち、半分はやめていったものの、残り半分は息長く続けているという姿が浮かび上がってくる。
(出典:渡辺(2014)「応援消費」)
終わったのは、個別のサービスの方だった
コロナ禍の応援消費を代表する例としてよく挙がる「さきめし」は、2020年3月に始まり、テレビで50番組以上取り上げられ、日本ギフト大賞やグッドデザイン・ベスト100も受賞したサービスでしたが、2024年に役目を終えました。
さきめしの役目は、静かに終わりを迎えた。
(出典:さきめし公式サイト)
能登半島地震のあとに石川県が展開した取り組みを扱った論文は、ロゴマークの利用やメディアの露出について、こう見通しを書いています。
とはいえ,震災から時間が経つにつれ,ロゴマークの利用やメディアの露出は徐々に減少していくことが予想される。
(出典:會澤裕貴・中塚健也・水越康介「応援消費おねがいプロジェクト—能登半島地震における石川県の取り組み—」『マーケティングジャーナル』45巻4号、2025年)
買うという行動は、ほかの支援よりも続きました。一方で、さきめしのように役目を終えたサービスもあります。能登の取り組みについては、ロゴマークの利用やメディアの露出がこれから減っていくと、論文が見通しを書いています。
代金が作り手本人に向かう型
消費者庁の資料は、「被災地産品の応援消費」と「障害者支援につながる消費」を別の項目として並べていました。後者にあたるのが、就労継続支援B型事業所が作る商品です。
代金の向かう先は、型によってこう分かれます。
- ふるさと納税や購入型クラウドファンディング:代金の一部が、自治体やプラットフォームという第三者へ
- B型事業所の商品:代金が事業所の生産活動の収入になり、そこから利用者本人に工賃として
行き先が第三者の団体なのか、作り手本人なのかという違いで、どちらが優れているという話ではありません。
工賃の仕組みや全国の推移、都道府県別の実データ、B型事業所という制度そのものについては、次の記事にまとめました。
次に「応援消費」と書かれた品を手に取ったら、その代金がどこまで公開されているかを、一度確かめてみてください。上限が法律で決まっている型もあれば、率を自分で公開している型もあり、非公開のまま終わる型もあります。どれを選ぶにしても、行き先を知ったうえで払う一万円は、知らずに払う一万円とは、少し違って見えるはずです。
本記事の情報は、2026年9月3日時点で公的機関・学術論文・各社公式ページを確認したものです。制度や手数料は変更される場合があります。最新の情報は各出典でご確認ください。