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A型事業所とB型事業所の違い|雇用契約と、お金の決まり方
2026年8月10日
目次
A型事業所とB型事業所の違いは、事業所と利用者が雇用契約を結ぶかどうかの一点にあります。就労継続支援A型は雇用契約に基づく就労が可能な人が対象で、対価は最低賃金法が適用される「賃金」です。就労継続支援B型は雇用契約に基づく就労が困難な人が対象で、対価は「工賃」と呼ばれ、下限は最低賃金ではなく月平均3,000円という別の基準で定められています。
言葉にすると一行で済むのですが、事業所の案内やパンフレットでこの二つを並べて見たとき、引っかかるのは呼び名よりも金額のほうだと思います。
厚生労働省が公表した令和6年度の全国平均を並べてみると、B型の工賃は月24,141円、A型の賃金は月91,451円でした(出典:令和6年度工賃(賃金)の実績について|厚生労働省。都道府県別の推移は工賃データベースにまとめています)。同じ制度の中にある二つの区分なのに、受け取る額はひと桁近く違います。この差はどこから生まれているのか、法令の条文を一つずつ確かめてみました。
同じ「就労継続支援」の中の、二つの区分
就労継続支援は、障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)第5条第15項が定める福祉サービスです。条文にはこう書かれています。
この法律において「就労継続支援」とは、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
(出典:障害者総合支援法(e-Gov法令検索))
読み返しても、A型・B型という呼び方はどこにも出てきません。この二つを分けているのは、同法施行規則第6条の10です。
一 就労継続支援A型 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者であって雇用契約に基づく就労が可能であるもの(略)に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
二 就労継続支援B型 通常の事業所に雇用されることが困難であって雇用契約に基づく就労が困難であるもの(略)に対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
条文を並べて分かるのは、A型とB型が別の制度ではないということです。どちらも同じ「就労継続支援」の中にある二つの区分で、分かれ目は「雇用契約に基づく就労が可能であるか、困難であるか」という一点だけです。冒頭で見た91,451円と24,141円という差は、この一語から始まっています。
対価の呼び方と、下限の決め方が違う
雇用契約を結ぶA型では、対価は「賃金」と呼ばれます。最低賃金法が適用されることは、厚生労働省の資料に明記されています。
最低賃金含め、労働関係法令の適用あり
(出典:就労継続支援A型の状況について(社会保障審議会障害者部会第143回・令和6年11月14日資料3)|厚生労働省)
一方のB型は、雇用契約を結びません。施行規則第6条の10第2号にも、A型にある「雇用契約の締結等による」という文言が入っていません。対価は「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれ、下限を定めているのは最低賃金法ではなく、指定基準(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第201条第2項です。
前項の規定により利用者それぞれに対し支払われる一月当たりの工賃の平均額(第四項において「工賃の平均額」という。)は、三千円を下回ってはならない。
つまりA型とB型は、対価の呼び名だけでなく、下限の決め方そのものが違います。A型は最低賃金という金額水準で下限が決まり、B型は「一月あたり平均3,000円」という別の基準で下限が決まります。工賃という仕組み自体の成り立ちは、工賃とは|買い物が作り手の工賃になる仕組みにまとめています。
A型にも、雇用契約を結ばない利用者がいる
A型と聞くと、利用者全員が雇用契約を結んでいると思われがちです。しかし指定基準第190条には、例外があります。
指定就労継続支援A型事業者は、指定就労継続支援A型の提供に当たっては、利用者と雇用契約を締結しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、指定就労継続支援A型事業者(多機能型により第百九十八条に規定する指定就労継続支援B型の事業を一体的に行う者を除く。)は、規則第六条の十第二号に規定する者に対して雇用契約を締結せずに指定就労継続支援A型を提供することができる。
(出典:同上・指定障害福祉サービス基準)
雇用契約を結ばない利用者がいる場合、その対価は賃金ではなく工賃と呼ばれます。適用されるのは指定基準第192条第3項と第5項です。
指定就労継続支援A型事業者は、第百九十条第二項の規定による利用者(以下この条において「雇用契約を締結していない利用者」という。)に対しては、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。
5 第三項の規定により雇用契約を締結していない利用者それぞれに対し支払われる一月あたりの工賃の平均額は、三千円を下回ってはならない。
(出典:同上)
A型という同じ看板の下にも、賃金を受け取る人と工賃を受け取る人がいます。「A型は全員が雇用契約」とは言い切れないと分かったのは、この条文を読んでからでした。
最低賃金にも、減額を認める特例がある
最低賃金法第7条は、都道府県労働局長の許可を受けたときに限って、最低賃金額からの減額を認めています。
(最低賃金の減額の特例)
第七条 使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
一 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
(二号〜四号は試用期間中の者などが対象で、障害とは別枠です。出典:最低賃金法(e-Gov法令検索))
対象になりうるのは、雇用契約を結び最低賃金法の適用を受けるA型の利用者です。ただし、障害があるというだけでは許可されません。厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署名義のリーフレットには、こう書かれています。
単に障害があるだけでは、許可の対象とはなりません。その障害が業務の遂行に、直接、支障を与えていることが明白である必要があります。また、支障があったとしても、その支障の程度が著しい場合でなければ、許可の対象とはなりません。
(出典:最低賃金の減額の特例許可申請について|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署)
許可には都道府県労働局長の判断が要り、業務遂行への支障が著しいと認められて初めて減額率が決まります。最低賃金という下限があるからこそ、それを下回るには個別の許可という手続きが必要になる、という構造です。
利用料の上限は同じ、対象者と利用期間は違う
事業所側の運営基準だけでなく、利用者が支払う自己負担にも決まりがあります。障害者総合支援法施行令第17条は、障害福祉サービス全体の負担上限月額を、世帯の所得に応じて区分しています。
| 区分(施行令第17条) | 負担上限月額 |
|---|---|
| 下の3つのいずれにも当てはまらない場合(第1号) | 37,200円 |
| 本人と配偶者の市町村民税所得割の合算額が16万円未満の場合(第2号ロ。グループホームを利用している方、施設に入所している方、療養介護を利用する方、一定の要件に該当する自立訓練・就労移行支援の利用者は除かれます) | 9,300円 |
| 障害児の保護者であって、世帯の市町村民税所得割の合算額が28万円未満の場合(第3号) | 4,600円 |
| 本人と同一世帯の方(特定支給決定障害者の場合は本人と配偶者)が市町村民税非課税、または生活保護を受けている場合(第4号) | 0円 |
(出典:障害者総合支援法施行令(e-Gov法令検索) 第17条)
この負担上限月額の区分は、A型とB型で分かれていません。同じ障害福祉サービスとして、同じ枠組みが適用されます。「B型は無料でA型は有料」といった制度上の違いはありません。
対象者は異なります。厚生労働省のページによると、A型の対象者は「企業等に就労することが困難な者であって、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な者」で、就労移行支援を利用したが企業の雇用に結びつかなかった人などが例に挙がります。B型の対象者は「就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者など」で、50歳に達している人や障害基礎年金1級受給者などが例に挙がります(出典:障害福祉サービスについて|厚生労働省)。
利用期間にも違いがあります。A型は厚生労働省の資料に「利用期間の制限なし」と明記されています(出典:前掲・障害者部会資料3)。法令の条文を見ても、就労移行支援を定める第5条第14項には「主務省令で定める期間にわたり」という期間の定めがある一方、就労継続支援を定める第15項にはこの文言がありません。A型・B型を分ける施行規則第6条の10にも、期間の定めは出てきません。B型事業所でどんな仕事をしているか、見学から利用までの流れはB型事業所とは|仕事・工賃・商品をやさしく解説にまとめています。
月収を時給で割っても、労働時間は出てこない
ここまでの数字は、すべて月額でした。時給に直すといくらになるのか、気になった方もいると思います。
厚生労働省は平成24年度から、工賃・賃金の時間額も調査していました(出典:平成24年度工賃(賃金)の実績について|厚生労働省。同資料に「「時間額」は平成24年度から調査開始」と注記されています)。もっとも新しい公表値は令和4年度です。
| 施設種別 | 月額 | 時間額 |
|---|---|---|
| 就労継続支援B型事業所 | 17,031円 | 243円 |
| 就労継続支援A型事業所 | 83,552円 | 947円 |
令和5年度以降の公表資料には、この時間額の欄そのものがありません。冒頭で見た令和6年度の91,451円・24,141円という数字に対応する時間額は、そもそも公表されていないということです。ここで、月収を時給で割れば労働時間が出るのではないか、と考えたくなります。
しかし、月額と時間額は、同じ年度の同じ実績から別の方法で集計された、別々の数字です。厚生労働省の課長通知は、両者の算定方法をこう定めています。
平均工賃(賃金)月額を算定して報告する場合
ア 報告対象年度各月の工賃(賃金)支払対象者の総数を算出(例:50人定員で、工賃支払い対象者が、4月45人、5月50人、(略)3月50人の場合は、45+50+(略)=584人となる。)
イ 報告対象年度に支払った工賃(賃金)総額を算出
ウ イ÷アにより1人あたり平均月額工賃(賃金)額を算出
平均工賃(賃金)時間額を算定して報告する場合
ア 各日の各時間毎の工賃(賃金)支払対象者の延べ人数を各日毎に算出
イ 上記により算出した全ての日の延べ人数を合計
ウ 対象年度に支払った工賃(賃金)総額を算出
エ ウ÷イにより1人あたり平均工賃(賃金)時間額を算出
(出典:就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について|厚生労働省)
月額の分母は「工賃支払対象者の延べ人月」、時間額の分母は「工賃支払対象者の延べ人時」です。分母がまったく違う二つの数字を割り算すると、出てくるのは「1人・1か月あたりの工賃支払対象時間」という、また別の値になります。それは労働時間そのものではありません。所定労働時間や休憩、欠勤、有給休暇の扱いが月額側と時間額側で同じだとは、この通知のどこにも書かれていないからです。
分母は、途中で変わってもいます。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で、平均工賃月額に応じた報酬体系を採用するB型事業所については、前年度の「工賃支払対象者数」に代えて前年度の「一日当たりの平均利用者数」を分母に用いる方式が導入されました。障害の特性などで利用日数が少ない方を受け入れている事業所への配慮によるもので、令和5年度の実績から反映されています(出典:前掲・令和6年度工賃(賃金)の実績について)。冒頭で見た24,141円は、この新しい方式で算出された数字です。算定方式が変わった前後の読み方は、工賃とは|買い物が作り手の工賃になる仕組みで詳しく説明しています。
しかも、月額と時間額はそもそも年度がそろっていません。91,451円は令和6年度、947円は令和4年度の値です。年度をそろえて令和4年度の数字同士(83,552円と947円)で割ったとしても、分母の定義が違う以上、出てくる数が労働時間になるわけではありません。年度をまたいだ場合は、そこにもう一つ別のずれが重なるだけです。
労働時間について厚生労働省が公表しているのは、割り算の結果ではなく、まったく別の調査です。令和4年度障害福祉サービス等報酬改定検証調査(対象452事業所)は、A型事業所の1日あたりの平均労働時間を、階級別の分布として公表しています。
| 1日の平均労働時間 | 構成比 |
|---|---|
| 2時間以上3時間未満 | 0.2% |
| 3時間以上4時間未満 | 2.9% |
| 4時間以上4時間30分未満 | 49.6% |
| 4時間30分以上5時間未満 | 15.5% |
| 5時間以上6時間未満 | 18.4% |
| 6時間以上7時間未満 | 7.3% |
| 7時間以上 | 2.9% |
| 無回答 | 3.3% |
(出典:就労継続支援A型に係る報酬・基準について≪論点等≫|厚生労働省)
4時間以上5時間未満の事業所を合わせると、全体の約65%です。月収を時給で割った推定値ではなく、事業所そのものへの調査から出てきた分布として、今のところ確かめられるのはここまでです。
買った代金は、どこへ向かうのか
商品を1点買ったとき、その代金はどこへ向かうのでしょうか。
B型では、指定基準第201条第1項がこう定めています。
指定就労継続支援B型の事業を行う者(略)は、利用者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。
(出典:同上・指定障害福祉サービス基準)
生産活動の収入から必要経費を引いた残りは、全額を工賃として利用者に支払う義務があります。控除できるのは生産活動に必要な経費だけで、事業所が残額を留保できるとは条文のどこにも書かれていません。
A型では、指定基準第192条第2項がこう定めています。
指定就労継続支援A型事業者は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない。
(出典:同上)
こちらは方向が逆です。生産活動の収益が、あらかじめ決まっている賃金総額を下回ってはならないという、下限を守る義務になっています。賃金そのものは雇用契約と最低賃金法で決まるため、売上が増えた分がそのまま賃金として増える仕組みにはなっていません。B型は分配の義務、A型は下回ってはならない義務で、方向が違うだけです。
そしてA型・B型の両方に共通する規定が、同じ指定基準の第192条第6項にあります。
賃金及び第三項に規定する工賃の支払いに要する額は、原則として、自立支援給付をもって充ててはならない。ただし、災害その他やむを得ない理由がある場合は、この限りでない。
(出典:同上。この規定は第202条によりB型にも準用されます)
賃金も工賃も、原則として自立支援給付、つまり公費を財源にしてはならないということです。事業所の運営費には給付費が充てられますが、作り手が受け取る対価の原資は、生産活動の収入でなければなりません。商品を1点買ったとき、その代金が向かう先は税金ではなく、その事業所の生産活動会計だと、条文がそう決めています。
買うときに何を確かめればいいか
B型の工賃24,141円とA型の賃金91,451円が、ひと桁近く違って見えたのは、優劣の差ではなく、雇用契約という入口の違いから来る構造でした。B型は雇用契約を結ばず、対価は工賃と呼ばれ、月平均3,000円という下限で支えられています。A型は雇用契約を結び、賃金は最低賃金法で支えられています。どちらの事業所で作られた品も、代金の行き先は税金ではなく生産活動の収入で、それを公費で埋め合わせることは原則としてできません。
次にA型・B型という表示を見かけたら、思い出していただきたいのはこの一点です。違いは「どちらが良いか」ではなく「対価がどういう仕組みで決まっているか」であり、月収を時給で割ったところで労働時間は出てきません。実際にA型・B型の商品を選ぶなら、サステナブルギフト12選から見ていただけます。
本記事の情報は2026年8月10日に、e-Gov法令検索の法令原文および厚生労働省の公式ページ・公式PDFで確認したものです。最低賃金の減額特例の許可件数、A型事業所の廃止件数など、公表資料で確認できなかった数値は本記事に記載していません。基準や運用は改定される場合があるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。