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就労移行支援とは|対象・期間・利用料・A型B型との違い
2026年10月21日
目次
就労移行支援とは、一般企業などで働くことを希望する障害のある人(原則65歳未満)が、原則2年の期間で、就労に必要な知識や能力を高める訓練と、実習・求職活動・就職後の定着の支援を受けられる、障害者総合支援法のサービスです。同じ「就労」の名がつくA型・B型と違い、期間が決まっていて、一般企業への就職をゴールに置いています。
病院や役所、ハローワークで「就労移行支援」という言葉を聞いて、何をする場所なのか、自分や家族が使えるのか、お金はかかるのか、A型やB型と何が違うのかが分からないまま持ち帰った方は多いのではないでしょうか。私も同じ問いを持って、法令の条文と厚生労働省の資料を一つずつ開きました。
就労移行支援の定義は、法律にこう書かれている
障害者総合支援法第5条第14項は、就労移行支援をこう定義しています。
この法律において「就労移行支援」とは、就労を希望する障害者及び通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものにつき、主務省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
(出典:障害者総合支援法(e-Gov法令検索))
この条文には、使える人と期間を決める言葉が二つ入っています。
- 「主務省令で定める期間にわたり」:利用できる期間の定めがある
- 「通常の事業所に雇用されている障害者」:働きながら使える場合がある
何をしてくれるのか
具体的な中身は、同法施行規則第6条の9と、事業所が守る指定基準に書かれています。
- 訓練(生産活動、職場体験、通勤の訓練)
- 実習
- 求職活動の支援
- 職場の開拓
- 就職後の定着の支援
訓練と実習
訓練は、生産活動や職場体験などを通じて、就労に必要な知識や能力を高めるものです。指定基準は、通勤の訓練を実施すること、実習の受け入れ先を確保することを、事業所に義務づけています。
実習の確保は、A型では「確保に努めなければならない」という努力義務で、就労移行支援は義務です(指定基準第180条、第193条)。
求職活動と職場の開拓
事業所は、ハローワークでの求職登録など、利用者が行う求職活動を支援しなければなりません(指定基準第181条)。施行規則には「その適性に応じた職場の開拓」も挙がっています。
人員の面でも、就労支援員を置くことが定められているのは、就労系3サービスのうち就労移行支援だけです。利用者15人につき常勤換算で1人以上と決まっています。
就職してからの6ヶ月
就職したら終わり、ではありません。指定基準第182条第1項は、利用者が就職した日から6ヶ月以上、職業生活における相談などの支援を続けなければならないと定めています。
利用者の職場への定着を促進するため、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連携して、利用者が就職した日から六月以上、職業生活における相談等の支援を継続しなければならない。
事業所に支払われる基本報酬も、就職後6ヶ月以上続いた人の割合が高いほど高くなる仕組みです(出典:就労系障害福祉サービスの概要|厚生労働省)。就職後の定着まで、事業所の収入に関わる作りです。
誰が使えるのか
対象は、就労を希望する65歳未満の障害のある人で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人です(施行規則第6条の9)。
65歳以上の場合
65歳以上でも、次の二つがそろう場合だけは対象になります。
- 65歳に達する前の5年間、引き続き障害福祉サービスの支給決定を受けていた(入院などやむを得ない期間は除く)
- 65歳に達する前日に、就労移行支援の支給決定を受けていた
これは、すでに使っている人が65歳で打ち切られないための例外で、65歳を過ぎてから新しく使い始める人は対象になりません。
働いている人、休職中の人
在職中でも使える場合があります。施行規則第6条の7の5は、新たに雇用されたあとに労働時間を延ばそうとする場合と、休職から復職しようとする場合を挙げています。厚生労働省の資料には、休職者が復職した場合は一般就労への移行者として扱うとあります(出典:前掲・就労系障害福祉サービスの概要)。
手帳がなくても使えるか
手帳がなくても使えるかは、全国共通の条文には書かれていませんでした。自治体の運用例として、兵庫県宝塚市の手引きは、各種手帳のほか、自立支援医療(精神通院)の受給者証、診断書、指定難病の医療受給者証などを確認書類の例に挙げています。同じ手引きでは、就労移行支援の利用に障害支援区分の認定は不要とされています(出典:障害福祉サービス等利用の手引きVer.1|宝塚市)。手帳をお持ちでない方は、お住まいの市区町村の窓口にどの書類で確認できるかを聞くのが確実です。
利用できる期間は原則2年、最大1年の更新がある
利用期間は、施行規則第6条の8が「二年間」と定めています。ただし、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格を取る目的の事業所は、3年か5年です。
2年を過ぎて使い続けたい場合は、市町村審査会の個別審査で必要性が認められたときに限り、最大1年の更新ができます(出典:前掲・就労系障害福祉サービスの概要)。
支給決定そのものは、2年分を一度に出すのではなく、最長12ヶ月ごとに市町村が決めて更新していきます(施行規則第15条第1項第一号)。休職中の人や労働時間を延ばす人は、1ヶ月から6ヶ月の範囲です。
就職後の6ヶ月が過ぎると、就労定着支援(最長3年)に移れます。就労定着支援は、就労移行支援や生活介護などを使ったあとに通常の事業所へ雇用された人が、就労を続けられるよう、連絡調整や相談を受けるサービスです。就労を続けて6ヶ月たった人が対象で、期間は施行規則第6条の10の3で「三年間」と決まっています(出典:障害福祉サービスについて|厚生労働省)。
利用料は、世帯の収入で4区分に分かれる
利用料は、サービスを使った量にかかわらず、世帯の収入に応じた月額の上限までしかかかりません。厚生労働省が示す4区分は次のとおりです。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
(出典:障害者の利用者負担|厚生労働省)
同じ資料の注によると、低所得は3人世帯で障害基礎年金1級を受給している場合、収入が概ね300万円以下の世帯が目安です。一般1の「所得割16万円未満」は、収入が概ね670万円以下の世帯が目安とされています。18歳以上の場合の世帯は、障害のある本人とその配偶者です。
「ほとんどの人が自己負担なし」という説明を事業所のページで見かけますが、その割合を示す公的な資料は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。ご自身がどの区分になるかは、窓口で確かめられます。
就労移行支援で工賃は出るのか
事業所の案内には「基本的に工賃の支払いはありません」と書かれていることがあります。ただ、指定基準を読むと、もう少し細かい決まりがありました。
就労移行支援の指定基準(第184条)は、生産活動の工賃について定めた第85条を準用しています。
指定生活介護事業者は、生産活動に従事している者に、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならない。
(出典:前掲・指定障害福祉サービス基準。就労移行支援に読み替えて適用)
つまり、事業所が生産活動を行い、利用者がそれに従事したときは、収入から経費を引いた額を工賃として払う義務があります。生産活動をするかどうか、いくらになるかは事業所ごとに違い、就労移行支援の工賃額の全国統計は、今回確認した厚生労働省の資料にはありませんでした。
B型にある「月平均3,000円以上」という下限は、就労移行支援には準用されていません。工賃が「収入から経費を引いた額」で決まる仕組みは、工賃とは|買い物が作り手の工賃になる仕組みにまとめています。
A型・B型・就労定着支援は、目的が違うサービス
就労系のサービスは、どれが上でどれが下ということではなく、目的が違います。就労移行支援は一般企業への就職に向けた訓練、A型とB型は働く場を提供しながら力を高める就労継続支援、就労定着支援は就職したあとの継続です。
| 項目 | 就労移行支援 | A型 | B型 |
|---|---|---|---|
| 目的(法第5条) | 就労に必要な知識・能力を高める訓練(第14項) | 就労の機会の提供と訓練(第15項) | 同左(第15項) |
| 雇用契約 | なし | あり | なし |
| 受け取るもの | 生産活動をした場合は工賃(下限の定めなし) | 賃金(最低賃金法が適用) | 工賃(月平均3,000円以上) |
| 利用期間 | 標準2年+審査で最大1年 | 制限なし | 制限なし |
| 利用者数(令和8年6月) | 39,000人 | 88,019人 | 437,379人 |
(出典:施行規則第6条の8・第6条の10、指定基準第201条、前掲・就労系障害福祉サービスの概要、障害福祉サービス、障害児給付費等の利用状況について|厚生労働省)
A型とB型の分かれ目は、雇用契約に基づく就労が可能か困難かの一点です。
- 令和6年度の全国平均は、B型の工賃が月24,141円、A型の賃金が月91,451円(出典:令和6年度工賃(賃金)の実績について|厚生労働省)
- 都道府県別の推移は工賃データベース
- 条文の読み比べはA型事業所とB型事業所の違い
- B型の仕事や利用の流れはB型事業所とは
実際にどれくらいの人が就職しているのか
厚生労働省の「社会福祉施設等調査」をもとにした資料に、一般就労への移行率が載っています。令和6年は、サービスの利用を終えた人のうち、一般就労に移った人の割合が、就労移行支援で60.2%、A型で約29%、B型で11.8%でした(出典:障害福祉サービスからの就職者|厚生労働省)。
この割合の分母は、利用者全体ではなく、その年にサービスの利用を終えた人です。「就労移行支援を使えば6割が就職できる」という意味ではありません。「利用を終えた人」という定義からすると、就職した人のほかに、途中でやめた人や別のサービスに移った人も分母に入り、まだ利用中の人は入りません。
人数で見ると、令和6年に就労系サービスから一般就労へ移った約2.9万人(28,943人)のうち、就労移行支援は16,827人でした。計算すると約58%にあたります。同じ資料の利用者数は就労移行支援が約3.7万人、B型が約38.8万人(令和7年3月)なので、利用者がB型の10分の1以下の就労移行支援が、移行者の過半を出していることになります。
B型の11.8%を、B型では就職できないという意味に読むのは違います。B型は通常の事業所に雇用されることが困難な人を対象に、働く場を提供するサービスで、目的が違います。
事業所の数は、減る方向にあります。国保連のデータでは、就労移行支援の請求事業所は減り、利用者は増えています。
| 時点 | 請求事業所数 | 利用者数 |
|---|---|---|
| 令和3年度平均 | 3,040か所 | 35,607人 |
| 令和8年6月 | 2,740か所 | 39,000人 |
(出典:前掲・障害福祉サービス、障害児給付費等の利用状況について)
2025年10月にできた就労選択支援で、何が変わったか
2025年10月から、就労移行支援や就労継続支援を使う前に、自分に合う働き方を整理する新しいサービスとして、就労選択支援が始まりました。就労を希望する人が、短期間の生産活動などを通じて、適性や能力の評価、意向や必要な配慮の整理を受けるもので、支給決定の期間は原則1ヶ月です(出典:前掲・就労系障害福祉サービスの概要)。
今、就労移行支援を使うのに必須か
2026年10月時点では、必須ではありません。厚生労働省の通知は、新たに就労移行支援を使う意向のある人を「本人の希望に応じて」就労選択支援を使える人に含めています。必須になったのはB型で、新規に使う場合は原則として就労選択支援を先に受けることが求められます(50歳以上や障害基礎年金1級の受給者などは除かれます。出典:「就労選択支援の実施について」の一部改正について|厚生労働省)。
2027年4月以降は予定
同じ通知には、令和9年(2027年)4月以降、標準利用期間を超えて就労移行支援を使う場合も、就労選択支援のアセスメントを受けていることが対象の条件になる予定だと書かれています。ただし、取り扱いは「改めてお示しします」とされていて、確定ではありません。
2年を超えて使うことを考えている方は、利用中の事業所や市区町村の窓口に、最新の扱いを確かめてください。就労選択支援の事業所は、令和8年6月末時点で全国965か所です(出典:就労選択支援事業所数(令和8年6月末日現在)|厚生労働省)。
利用までの流れと、事業所の探し方
利用には、市区町村への支給申請が必要です。宝塚市の手引きに載っている流れは次のとおりです。仙台市も、利用の前に支給申請の手続きが必要で、窓口は区役所だと案内しています(出典:就労移行支援|仙台市)。
- 市役所の窓口で受け付けてもらう
- 相談し、計画相談支援事業所にサービス等利用計画案の作成を依頼する
- 面談調査を受ける
- 申請書と計画を、計画相談支援事業所から市に提出する
- 受給者証が発行される(概ね2週間、基本は1年ごとの更新)
- 受給者証を持って事業所と利用契約を結び、利用を始める
(出典:前掲・障害福祉サービス等利用の手引きVer.1)
就労移行支援では、正式な支給決定の前に「暫定支給決定」を受け、一定期間サービスを使ってから支給決定に進むのが基本です。就労選択支援を経て使う場合は、暫定支給決定が要らなくなりました(出典:「介護給付費等の支給決定等について」の一部改正について|厚生労働省)。
事業所を探すには、WAM NETの「障害福祉サービス等情報検索」が使えます。全国の障害福祉サービス事業所を、地図、名称、所在地、事業所番号などで調べられます(出典:WAM NETとは)。
まず窓口に相談するところから
使えそうだと思ったら、手続きの入口は二つです。
- お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に、就労移行支援を使いたいことと、手帳などの持ち物を相談する
- 候補の事業所を見学し、就職後6ヶ月の支援や実習先の探し方、通っている人がどこへ就職しているかを、直接聞く
訓練の中身や、生産活動をするかどうか、就職後の支援の手厚さは事業所ごとに違うので、見学して直接聞くことが、選ぶうえでいちばん確かな手がかりになると思います。
本記事の情報は2026年10月21日に、e-Gov法令検索の法令原文および厚生労働省の公式ページ・公式PDFで確認したものです。就労移行支援の工賃額の全国統計など、公表資料で確認できなかった数値は記載していません。基準や運用は改定される場合があるため、最新の情報は各公式サイトと市区町村の窓口でご確認ください。本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。