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フェアトレードとは|仕組みと、決まっている金額
2026年8月6日
目次
「公正な価格で買う仕組み」。フェアトレードの説明を読むと、たいていこの一文に行き着きます。けれど、公正がいくらのことを指すのかは、この一文だけでは分かりません。
この媒体で贈りものを選ぶときは、いつも代金の行き先まで調べています。フェアトレードのラベルが付いた商品も同じように確かめようとして、Fairtrade Internationalの公式サイトを開いてみました。すると、コーヒー1ポンドあたり、カカオ1トンあたりの金額が、そのまま公式の価格表に書かれていたのです。
決まっているのは、いくらなのか。分かったことをそのまま書きます。
フェアトレードとは何か
Fairtrade Japanは、フェアトレードをこう定義しています。
開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」
(出典:フェアトレードとは?|Fairtrade Japan)
フェアトレードとは、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組みのことです。
ここでの「適正」は、まだ理念の言葉です。何ドルなのかはこの定義に出てきません。金額を実際に決めているのは、これから見る2つの認証の仕組みです。
フェアトレードには2つの系統がある
フェアトレードと一口に言っても、審査の対象が違う2つの系統があります。
WFTO(世界フェアトレード連盟)は、企業や団体そのものを10の指針で審査する保証システムです。公式サイトは「製品認証の仕組みではない(not a product certification system)」と明言しています。特定の商品や原料ではなく、ミッションや事業モデル、サプライチェーンを含めた事業の全体を見て、合格した会員が自社のフェアトレード製品にWFTOラベルを付けられます(出典:Our Fair Trade System|WFTO)。
国際フェアトレード認証(Fairtrade International)は、生産者組織やトレーダー、製造者といった事業者がFLOCERTの監査を受けて認証され、その結果として基準を満たした製品に国際フェアトレード認証ラベルが付く仕組みです。産品ごとに最低価格とプレミアムという金額が定められているのが、この系統の最大の特徴です。
ひとことで言うなら、ラベルが商品に付くのが国際フェアトレード認証、ラベルの前に会社そのものを見るのがWFTOです。
価格表に書かれている金額を見る
金額が具体的に決まっているのは、国際フェアトレード認証の側です。WFTOの指針4は、適正な価格を売り手と買い手の対話のなかで決めるものと定めていて、産品ごとの額そのものは示していません。
出典は、Fairtrade Internationalが公開しているフェアトレード最低価格とプレミアムの価格表(2026年7月30日版)|Fairtrade Internationalです。版が変わると数字も変わるため、Current versionとされている2026年7月30日版の値を使います。
コーヒー(アラビカ種、ウォッシュト、慣行栽培、小規模生産者組織、FOB、1ポンドあたり)は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 最低価格(現行・2023年8月1日〜) | 1.80米ドル |
| 最低価格(2026年12月1日から) | 2.00米ドル |
| プレミアム | 0.20米ドル |
カカオ(カカオ豆、慣行栽培、小規模生産者組織、コートジボワールとガーナを除く世界、FOB、1メトリックトンあたり)は次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 最低価格 | 3,500米ドル |
| プレミアム | 275米ドル(2026年6月11日〜適用) |
この記事を書いている2026年8月6日時点では、コーヒーの最低価格はまだ1.80米ドルです。2026年12月1日から2.00米ドルに上がります。
ここで確かめておきたいのは、最低価格の性格です。価格表の定義には、こう書かれています。
The FMP is a floor price which covers producers’ average costs of production and allows them access to their product markets. … When the relevant market price for a product is higher than the Fairtrade minimum price, then at least the market price must be paid.
(出典:同上PDF)
最低価格は、生産者の平均的な生産コストをまかなえる水準として決められた「床」です。市場価格がこの額を上回れば、支払われるのは市場価格のほうになります。つまり最低価格は必ず上乗せされる額ではなく、下回れない下限です。フェアトレードだから常に市場価格より高く買っている、とは言えません。
プレミアムは、作り手個人の手取りではない
もう一つの金額であるプレミアムは、最低価格とは性格が違います。価格表には、こう定義されています。
Fairtrade Premium is an amount paid to producers in addition to the payment for their products. The use of the Fairtrade Premium is restricted to investment in the producers’ business, livelihood and community … Its specific use is democratically decided by the producers.
(出典:同上PDF)
Fairtrade Japanの日本語ページも、同じ内容をこう説明しています。
品物の取引価格に上乗せして生産者組合へ支払われる金額で、組合や地域の経済的・社会的・環境的開発のために使われる資金です。
(出典:フェアトレードのメリット|Fairtrade Japan)
使い道は、生産者のビジネスや暮らし、地域への投資に限られていて、それを生産者組合が民主的に決めます。つまりプレミアムは、農家個人にそのまま配られる収入ではなく、組合が管理する共同の投資資金です。「フェアトレードのチョコを買えば、作った農家の手取りがその分増える」という言い方は、正確ではありません。
WFTOの10の指針
WFTOは、10の指針を審査基準として定めています。公式の日本語版は見当たらなかったため、英語の正式名称に、めぐりものによる仮訳を添えます。
| # | 正式名称(英語) | めぐりものによる仮訳 |
|---|---|---|
| 1 | Creating Opportunities for Economically Marginalised Producers | 経済的に弱い立場にある生産者に機会をつくる |
| 2 | Transparency and Accountability | 透明性と説明責任 |
| 3 | Fair Trading Practices | 公正な取引慣行 |
| 4 | Payment of a Fair Price | 適正な価格の支払い |
| 5 | Ensuring No Child Labour and Forced Labour | 児童労働と強制労働の排除 |
| 6 | Commitment to Non Discrimination, Gender Equity and Women’s Economic Empowerment, and Freedom of Association | 差別の禁止、ジェンダー平等と女性の経済的自立、結社の自由への関与 |
| 7 | Ensuring Good Working Conditions | 良好な労働環境の確保 |
| 8 | Providing Capacity Building | 能力開発の提供 |
| 9 | Promotion of Fair Trade | フェアトレードの普及 |
| 10 | Respect for the Environment | 環境の尊重 |
(出典:WFTO Fair Trade Standard|WFTO 目次より。同じPDFの中でも、目次はこの指針4を「Payment of a Fair Price」と表記し、本文の見出しは「Fair Payment」となっています)
指針4の本文には、こう書かれています。
Fair Payment is made up of Fair Prices, Fair Wages and Local Living Wages.
(出典:同上PDF)
適正な支払いは、適正な価格、適正な賃金、その土地の暮らしを支えられる生活賃金の3つで構成される、という考え方です。さきほど見た最低価格とプレミアムは、この「適正な価格」を数字にした一例にあたります。
ラベルの種類
国際フェアトレード認証には、認証原料の扱いに応じて4種類のラベルがあります。
| ラベル | 対象 | 条件 |
|---|---|---|
| 標準ラベル(矢印なし) | 認証原料100%の製品 | 生産から輸出入、加工、製造を経て認証製品として出荷されるまで、認証原料と非認証原料が混在しないよう管理される(例:コーヒー、バナナ、スパイス) |
| 矢印付き認証ラベル | 非認証原料を含む製品 | フェアトレード認証原料は最低20%以上。割合はパッケージ裏面に記載される(例:クッキー、アイスクリーム) |
| マスバランス対応ラベル | 矢印付きラベルの一種 | カカオ、砂糖、フルーツジュース、および茶の4産品にのみ適用される |
| FSI(原料調達プログラム)ラベル | 特定原料のみ | タブに記載された特定の原材料だけがフェアトレードとして調達されたことを示す |
(出典:認証ラベルについて|Fairtrade Japan)
日本ではどれくらい広がっているか
Fairtrade Japanが2026年4月28日に発表した数字によると、2025年の国内推定市場規模は約190億円で、前年比は約88%でした。コーヒーは全体の8割以上を占める中核製品で前年比93%、重量ベースでは約1割増えています。カカオは前年比60%で、供給制約の影響、いわゆる「カカオショック」が響いたとされています(出典:国際フェアトレード認証製品の国内推定市場規模2025発表|Fairtrade Japan)。
市場は前年より縮んでいます。ただ、コーヒーは金額では前年比93%でも重量では約1割増えていますから、金額の増減だけでは、動きの中身までは分かりません。
公開されている場所が、日本の作り手とは逆になっている
国際フェアトレード認証の価格表に載っているのは、1ポンドあたり、1トンあたりの最低価格とプレミアムです。一方で、農家1人あたりの年収や時給は、この価格表のどこにも書かれていません。
日本の福祉事業所は、これとちょうど逆の粒度で公開されています。厚生労働省は、就労継続支援B型事業所の工賃を1人あたりの月額と時間額で公表しています。月額は令和6年度で24,141円、時間額は令和4年度で243円です。時間額は令和5年度以降の資料には掲載がなく、令和4年度が最新の公表値になります(出典:令和6年度工賃(賃金)の実績について|厚生労働省、令和4年度工賃(賃金)の実績について|厚生労働省)。1人あたりの平均は分かる一方で、商品1個あたりいくらが工賃になるかは、ほとんどの事業所で公開されていません。
整理すると、こうなります。
| 公開されている単価 | 公開されていない単価 | |
|---|---|---|
| フェアトレード | 1ポンドあたり、1トンあたりの最低価格とプレミアム | 農家1人あたりの年収や時給 |
| 日本の福祉事業所(就労継続支援B型) | 1人あたりの月額と時間額(全国平均、都道府県別) | 商品1個あたりいくらが工賃になるか |
制度が決めた単価は分かるが個人の手取りは分からないのがフェアトレードで、個人の平均は分かるが1個あたりは分からないのが日本の福祉事業所です。どちらも、半分しか見えていません。
工賃データベースをつくっているのは、この「商品1個あたり」の空白を、少しずつでも埋めたいからです。厚生労働省が公表している月額と時間額は、都道府県別まで工賃データベースにまとめてあります。工賃という仕組み自体の説明は工賃とは|買い物が作り手の工賃になる仕組みに、就労継続支援B型事業所という制度の説明はB型事業所とは|仕事・工賃・商品をやさしく解説にまとめています。
金額を確かめてから選ぶ
フェアトレードのラベルを見かけたら、まず思い出していただきたいのは、あの一文だけでは金額が分からないということです。価格表を開けば、コーヒーやカカオがいくらで取引される決まりなのかまで確かめられます。
これまでの特集で選んだ品のなかにも、工賃を数字で公開している作り手がありました。多くは非公開のままでしたが、どこまで分かってどこで行き止まりだったかも含めて、サステナブルギフト12選に一点ずつまとめています。
本記事の情報は2026年8月5日に、Fairtrade Japan、Fairtrade International、WFTOの公式サイトおよび公式PDFで確認したものです。米ドル表記の金額は円換算していません。本記事にアフィリエイトリンクは含まれていません。基準や価格は改定される場合があるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。